いざ個人で散骨をするに際には、どこで散骨をするべきなのでしょうか。
自分の手で海岸や山で散骨をしたり、散骨サービスを使って沖からの散骨、空、宇宙など様々な場所に散骨をすることは可能ですが、日本中、世界中どこでも好きな場所に散骨をして良いというわけではありません。
散骨をする際には、周辺の環境や近隣への影響などを十分に考慮し、節度をを守ったうえで執り行うことが必要とされています。
具体的に、散骨ができる場所、できない場所とはどこなのでしょうか。
海に散骨をする場合
「散骨」というと、パウダー状になったサラサラの遺骨を、青い大海原に撒くイメージをしていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
日本は海に囲まれている島国ですので、海にゆかりのある方も多いことでしょう。また、世界中どこにでも繋がっている海なら、どこにいても海を見れば故人を偲ぶことが出来ると、海洋散骨を選ばれる方も多くいらっしゃいます。
船で沖に出ての散骨:◎できる
船で沖に出ての散骨は、散骨をめぐってのトラブルになる場合がほとんどありません。
散骨代行業者が船を出して、ご遺族の代わりに散骨をしてくれる場合は、2万円くらいからのプランもあり、チャーターをするよりも費用が安く散骨ができます。
遺族の方が立ち会って、ご自身の手で散骨をするために船をチャーターするとなると、費用は10万円弱から、船の大きさやセレモニーの内容によって数十万円の費用がかかる場合もあります。
海岸からの散骨:◯できる
故郷の海、思い出の海からの散骨をする場合もあるでしょう。
海岸からの散骨を行ってはいけないという決まりはなく、節度を守って場所や時間帯を選べば、遺族の方も心を落ち着かせて散骨ができることでしょう。
ただし、周囲への十分な配慮が必要です。
また、条例によって散骨を禁止している場所もありますので、散骨される前には必ず調べてからにしましょう。
海水浴場や養殖場・漁場付近:×できない
レジャーで多くの家族が訪れて楽しい時間を過ごしている海水浴場での散骨は「節度を守った散骨」とは言えません。
海水浴をしている横で遺骨を散骨されては、管理をしている会社や利用者から苦情が来てしまうという可能性も十分にあります。海に浸かっている遊んでいる横で遺骨を散骨されては、どなたにとっても気持ちの良いものではないでしょう。
しめやかに故人を送り出したい中で、トラブルが起きてしまっては浮かばれません。
また、海産物の養殖場付近では散骨をするべきではありません。
これから収穫をして市場に並ぶ、漁業関係者の方にとっては大切な収入源であり商品です。海産物への風評被害に及ぶ可能性があれば、訴えられてしまうことも有り得ますので、漁場・養殖場のそばでの散骨は控えるようにしましょう。
陸上での散骨
海での散骨に比べ、陸上での散骨は土地の所有権が誰にあるかなどの問題が多く、制約があります。
自宅や私有地での散骨:△できる
自身が所有する自宅の土地であれば、散骨は可能です。
だた陸上での散骨は、私有地であっても遺骨が私有地の外に風で流れてしまったり、近隣との関係から噂が広まればトラブルにもなりかねませんので、注意が必要です。
借家やマンションでの散骨は避けましょう。
そして、自宅や私有の土地に撒く場合でも、決して土に埋めてはいけません。
あくまで、土の表面に撒くなら大丈夫です。
土に埋葬すると、墓地埋葬法に抵触して罪になりますので、あくまで地表にさらさらと撒くだけにしましょう。
山の散骨:△できる
山も、誰かの所有地です。それが個人の場合もあれば、企業や市町村・都道府県で所有している場合もあります。
私有地の山であれば問題なく散骨ができるかと思いますが、そうでない場合はまず、山の所有者を調べて管理者(事務局)からの許可を得る必要があります。
また、繰り返しになりますが、散骨をする場合は必ず粉末状にして、埋めるのではなく土の表面に撒きましょう。
多くの方が通る登山道に、人目に付くように散骨をしたり、遺骨を撒いたところにお花を置いたりするのも、「節度を守った」散骨からはそれてしまいます。山を利用するほかの方に配慮した散骨を心がけましょう。
レジャー施設や観光地の散骨:×できない
ディズニーランドやUSJ、有名観光地やなじみの公園など、「好きだった場所や思い出の場所に散骨してあげたい」と考えられる方も多くいらっしゃいますが、レジャー施設や観光地は運営会社が管理していますので、許可なく勝手に遺骨を散骨してはいけません。
公共の施設で勝手に散骨をすることで、「そこには人骨が撒かれている」風評被害などが生じてしまうと、土地の持ち主とトラブルになる可能性も十分にあります。
「許可を取れば良いのか?」という声もありますので、希望されるならばその場所の所有者に散骨を許可してもらえるか尋ねてみるのも良いかもしれませんが、人骨を散骨するという心理的な抵抗や今後のトラブルの防止のためにも、許可が下りるのは難しい場合が多いようです。
散骨を許可されるかは土地の所有者の意識に左右される
私有地以外の土地で散骨を行う場合、必ず土地の所有者に散骨の許可を取る必要があります。
管理会社や管理事務局がある土地の場合(レジャー施設など)は、散骨を許可するかどうかについて管理会社が取り決めをしている場合があります。
個人が所有する土地の場合、所有者自身が散骨に対して理解があるか、散骨を受け入れることがその土地を管理する者の方針に合っているかなどが、許可が下りるかどうかを左右するでしょう。
遺族にとっては「せっかくなら思い出の土地に骨を撒いてあげたい」という故人を思っての行動ですが、土地の所有者からすると「人骨を私有地に撒かれる」ということですから、所有者の方の意識や理解によって許可が下りない場合も十分に考えられます。
自分の所有地でない場所に散骨をしたいと思う場合には、その点も理解しておけば、散骨場所を1か所に決め込まずにたくさんの選択肢を考えておくこともできるでしょう。
市町村での条例がある場合も
散骨に関しては、海洋観光資源を守る目的で、散骨に規制を設けている場所もあります。
特に、北海道の一部地域や静岡県の地域(熱海周辺)では規制を設けている場合がありますので、散骨を希望する際には必ず事前に調べて条例の有無を確認する必要があるでしょう。
詳しくは「 」をご覧ください。
ペットの場合は散骨の規制はない
ペットの散骨の場合には、現状において特に規制はありません。
ただし、人の場合と同様に、遺骨は粉末状にして散骨を行うのがマナーです。
また、「節度を守った散骨」が求められるのも人と同様であります。
ペットの遺骨だからと、海水浴場やレジャー施設に勝手に撒くのは配慮に欠けた行動です。
ペットの場合は、自宅などの私有地でも土の中に埋める「埋葬」を行うことも可能です。
自宅のお庭に遺骨を埋葬して、そこに墓石や墓標などの目印を置く方もいらっしゃいます。
大切なのは節度を守って周りに配慮した散骨
大切な故人の遺骨が最後に眠る場所を決める散骨。
いくら大事な人のためと言えど、許可のない場所への勝手な散骨や、もし散骨しているところを目にした他者への配慮がない散骨はいけません。
散骨の際の「節度を守る」というのは、「時と場所を選び、他者にも配慮した行動で故人を偲ぶ」ということだと私どもは認識しています。
心を落ち着かせて故人を見送るためにも、思いがけないトラブルを引き起こさないよう、十分な確認や周辺への配慮が必要となります。