「遺骨の処分」という言葉には、とても冷たい印象を受けられる方もいらっしゃるかもしれません。
罰当たりな、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、全く知らない方の遺骨を引き継ぐことになったり、墓を維持することが難しい方など、
様々な理由で、遺骨の処分が必要となることも事実です。
本記事では、遺骨の適切にかつ、出来るだけお金をかけずに遺骨を処分する方法について具体的に解説していきます。
適切に遺骨を処分するには
適切な遺骨の処分方法を知る前にまず、自身が管理する遺骨がどのようなケースになるか確認しましょう。
遺骨はお墓にある状態ですか?それとも手元にあるのでしょうか?
遺骨の置かれている状態によっても処分の仕方は変わってきます。
それを踏まえた上で、具体的な遺骨の処分方法(散骨、土に還す、合祀墓、樹木葬、焼き切りなど)
についてそれぞれ解説します。
実際に、以下のような理由で遺骨の行き場に悩んでいる方は沢山のいらっしゃいます。
・お墓を建てる経済的な余裕がない
・疎遠な親族の遺骨を引き取ることになって悩んでいる
・故人の遺志によりお墓は作らないでほしいと言われた
・墓守が誰もいない
・墓じまいした後の遺骨をどうするか迷っている
本記事がお読みくださっている方にとって少しでも助けになればと思っています。
遺骨の処分に困ったケース1:疎遠な親戚の遺骨
「最近になって、実は会ったこともない親戚がいることを知った。その親戚には身寄りが無く亡くなったらしい。いくら親戚だからと言って、お骨を受け取らなければいけませんか?」
「親が亡くなりましたが、何十年も前に家を出て行ってそれっきり。私達家族はそのあとの生活にとても苦労した。亡くなったときでも親はお金も残してくれていないのに、子供ならいくら疎遠な親でも、墓を何百万もかけて建ててあげなくてはいけないの?」
人ひとりが生きていく中で関わってくるさまざまな人間関係。
皆が盆正月には親戚一同集まって、にぎやかに仲良く過ごしてきているわけではありません。
また、誰しもが最期は子供や孫に囲まれて幸せな最期を迎えるというわけでもありません。
いろいろな事情で、血縁があるかたとも疎遠に暮らしてこられた方もいらっしゃるでしょう。
自分が亡くなったときのために、お骨を託される親族に負担をかけたくないとお金を残してあげたい気持ちがあれど、実際には生前の生活にいっぱいいっぱいで十分にお金を残せない場合もあるでしょう。
疎遠な親族の遺骨でも、故人となった今、様々な事情を汲んで遺族ができる限りでの供養をしてさしあげる中で、「遺骨の正しい処分」というのも、1つの方法なのかもしれません。
遺骨の処分に困ったケース2:お墓がない、お墓がいらない
個人が生前に「お墓はいらない」と意思を伝えてくださっている場合もあるでしょう。
個々の墓石はいらないとしても、合同供養塔で永代供養をしてもらう方法や、樹木葬、散骨など、さまざまな供養の方法があります。
生前の元気なうちに、どのような供養の方法を望まれるのか伺えればよいですが、
故人の遺志が不明な場合は、遺された遺族がどのように供養をしたいかを相談して決めるのが良いです。
また、お金のかかることですから、各供養の方法でかかる費用を十分に検討して、現在暮らしている方々の生活が逼迫されないよう、可能な限りの供養をして差し上げるとよいのではないでしょうか。
お金をかけずに遺骨を適切に処分する方法
費用を出来るだけかけずに遺骨を適切に処分する方法について具体的にご説明していきます。
先に費用のかからない処分方法を順に並べると、以下のようになります。
無縁仏<<<焼き切り<自分で散骨<代行散骨<合祀墓<樹木葬
ただし、現在あるお骨壷が手元にあるのか、それともお墓にあるのかでも適切な処分方法は変わってきます。
先に、一番お金をかけない方法を挙げるなら、火葬場で遺骨を引き取ってもらうのが最も良いでしょう。
遺骨が自宅にある場合は、粉骨だけ業者に依頼して自分で散骨するのがもっとも費用が掛からない方法ですが、
散骨の手間を考えると散骨代行に依頼するのがオススメです。
墓に納骨された状態なら、合祀墓に入れる他にも、散骨、カロート内で遺骨を土にかえすことが可能な場合もあります。
順にご説明します。
最後に、遺骨の管理を放棄して無縁仏にするということについても解説します。
火葬場で遺骨を処分してもらう(遺骨を受け取らない)
遺骨をそのまま火葬場に預けて「受け取らない」という処分は可能なのでしょうか。
結論から言うと、火葬場によっては可能です。
ただし、ほとんどの火葬場ではお骨を遺族に返すことを基本にしていますので、事前に”遺骨を受け取らない”と言う希望を葬儀社や火葬場に伝えて確認をとることが必要です。
「遺骨は遺族が抱いて火葬場を出る」ということがまだまだ一般的である現代で、一見忍びない方法かと印象を受けてしまう場合もあるかと思いますが、実際に「お骨を管理できない」「お墓も建てられない」という遺族の事情により、そのような選択を望まれる方もいらっしゃいます。
火葬場や葬儀社によっては、遺骨を引き取ってくれる場合もあるようですが、引き取り可能か、その時にかかる費用、引き取った際はどのように処分されるのかも聞いたうえで、遺族の方が納得されてから利用した方が良いでしょう。
火葬場でお骨を完全に焼き切ってしまい、完全な灰にして火葬場で引き取ってもらう「ゼロ葬」という言葉も生まれています。
もちろん、あとから望んでも遺骨が戻ってくることはありません。
自分で散骨する
自分自身の手で遺骨を粉骨し、散骨することは、1番費用を抑えて遺骨を処分する方法です。
違法性はありません。
ただし、下記のような条件を守ることが必要です。
・遺骨は2mm以下になるよう細かく粉骨すること
・散骨の際は節度を守り、場所を選んで散骨をすること
人骨だとわかるくらいに形が残っている状態で散骨をすることは「遺骨遺棄罪」に触れる可能性があり、第三者に発見した場合には事件にも発展しかねません。
誰が見ても遺骨だとわからないくらい細かく粉骨をして散骨をすることが必須となります。
また、散骨をする場所もどこでもいいわけではありません。
「散骨」と言われると、多くの方が「海洋散骨」をイメージされるのではないでしょうか。
多くの方は海洋散骨を選択されますが、その際にも、たくさんの人が集まっている海水浴場や養殖場のそばなどは避けるようにしましょう。
山中散骨の場合は、土に埋めてはいけません。
墓地埋葬法に触れてしまうため、あくまで土の上に撒くようにしましょう。
自分で粉骨および、散骨をすることでかかる費用は、粉骨の際にあったほうが良い道具を準備する費用や、散骨場所までの交通費くらいでしょう。
粉骨から散骨まで全てご自身で行うのが1番費用がかからない方法です。
ただし、精神的な負担や、粉骨をご自身でされるのはかなりの労力がかかります。
粉骨は業者に依頼して散骨だけ自分で行うというのもオススメです。
粉骨だけだと費用相場は2万円以下で行えます。
散骨代行業者に遺骨の処分を依頼する
「いくら安いといっても、さすがに自分で骨を砕いたり、散骨したりするのは抵抗がある・・・」
という声も少なくありません。
そういった方のニーズに応えられるよう、散骨代行業者が存在します。
代行の業者に依頼をすることで、2〜4万円前後で粉骨から散骨までを遺族の代わりに行ってくれます。
全国に散骨代行業者が存在しているので、お近くの業者に問い合わせてみるのもいいでしょう。
遺骨を郵送で受け付けてくれるところも多くあります。
合祀墓に入れて永代供養してもらう
「後代に墓守がいない」という場合には、近年増えている永代供養のお墓や納骨堂にお骨を納める場合もあります。
お骨を納める際にのみ費用がかかりますが、年間の維持費や管理費はかかりません。
費用相場は、数万円~数十万円と幅がありますが、
個々のお墓の区画を購入し個別に墓石を建てるよりも費用は安く抑えられます。
樹木葬で永代供養する
樹木葬とは、遺骨を樹木の周りに埋葬し、墓標の代わりのような役割として植樹を行う供養の方法です。
樹木葬を執り行うには、各市町村で許可を得ている業者に依頼します。
木の下(土の中)に埋めるということですから、許可を得ていない一般家庭の方が、たとえ私有地だったとしてもお骨を土の中に埋葬してしまうと、墓地埋葬法に抵触し法律違反となります。
必ず樹木葬を執り行う業者に依頼するようにしましょう。
費用は場所にもよりますが、埋葬料が数万円、永代使用料が5万円~200万円くらいです。
人気の場所は費用も高くなる傾向があるようです。
そのほか、樹木のところにある石碑に名前を掘るなどのオプションが準備されている場合もあり、オプションを利用するのであればさらに数万円がかかります。
お墓にある遺骨を処分する
お墓に入っているお骨は取り出す際にも許可が必要となります。墓地の管理者に申請して遺骨を取り出す手続きを行いましょう。
お墓を壊して更地にすることを墓じまいと言います。
墓じまいする時に遺骨を取り出して遺骨を散骨したり、合同の供養塔(合祀墓)に遺骨を入れたりすることもできるでしょう。
遺骨を墓地内で土に還すという方法を取ることができる場合もありますので順に解説していきます。
墓じまいしてから合祀墓に入れる
多くの墓地には個別墓地の他に合同供養碑がある場合が多いと思います。
墓じまいをする際に遺骨を合祀墓に移せるかどうかを墓地の管理者と相談してみてください。
墓じまいの費用は墓地の大きさによって異なりますが、50−200万程度の費用がかかると言われています。
また、その他に合祀墓への永代供養費として数万円ー数十万円かかる場合もあります。
一度遺骨を取り出した場合には前述の「散骨」をするという選択肢もあります。
カロート内で遺骨を土に還す
お墓の骨壷を収めるスペースをカロートと呼びます。カロートはコンクリートでできた升(マス)なのですが、底が土になっている場合は、遺骨を骨壷から空けて長い年月をかけて土に還すという方法をとることも可能です。
お寺さんや墓苑の管理者に相談して可能かどうかを聞いてみる必要がありますが、
お墓じまいをする際や将来の墓じまいすることを考えて遺骨を自然に還してあげることができれば良いですよね。
無縁仏として遺骨を処分するという選択
不慮の事故で身元がわからないままになってしまったご遺体や、孤独死で血縁関係者がわからない場合、また、血縁者がわかっても遺体や火葬後の遺骨の引き取りを拒否した場合には、火葬後は無縁仏となります。
死亡時の状況だけではなく、墓地に埋葬されていた場合だったとしても、墓地の管理費を滞納し、各寺院が定めた期間に管理費が納められなかった場合も、その後無縁仏として扱われます。
また、時折テレビで「遺骨をトイレに遺棄した」というニュースを見たり、とある駅の忘れ物センターの特集で、忘れ物の中に遺骨があるなどの情報を目にすることがあります。こういった放棄された遺骨も、ゆくゆくは無縁仏として処分されることになります。
遺骨の所有者自体が亡くなってしまい連絡が取れなくなる場合やなどの止むを得ない事情もあるかと思いますが、費用を滞納して無縁仏になるのは寺院にも迷惑がかかることです。
また、意図的に遺骨を遺棄することは法律違反にもなります。
同じ無縁仏でも、本意でない事情で無縁仏になる場合と、遺族の意思により無縁仏にする場合と、様々なケースがあります。
故人を供養する方法を取られるのであれば、他人に迷惑をかけたり、法律を犯してまで無縁仏にする以前に、散骨や合祀墓への埋葬など選択肢が色々あることを、心の片隅においていただければと思います。
遺骨を勝手に処分してはダメ
「遺骨がコインロッカーに入れられたままになっていた」
「遺骨が電車内に置き去りにされていた」
などのニュースを耳にします。
いくらお墓を建てるお金がなくても、たとえ疎遠な間柄の方のご遺骨だったとしても、どこか公共の施設に置き去りにしたり、勝手に捨てたりしてはいけません。
遺骨をゴミと一緒に処分するなんてことはもってのほかです。
どこかに置き去りにされたり、遺棄されたのち誰かに発見されたりして事件となれば、故人も望まない悲しい結果ではないでしょうか。
誤解を恐れずに言うならば、きちんと正しい方法で遺骨を「処分」すると言うことは、敬意を払ったご遺骨の扱い方であり、お骨を遺された方のためにもなるのです。
妻の遺骨をスーパーのトイレに捨てた男性
以前、とあるスーパーのトイレに遺骨が遺棄されていたという事件が起きました。
遺骨の遺棄が事件化され報道されたことにより、テレビでそのことを知った、ひとりの男性が警察署に自首し、逮捕の結果、書類送検されました。
遺棄された遺骨は、その男性の妻の遺骨でした。
「妻が憎かった。」
と、遺棄の動機を語った男性。
お墓を作ってあげることすらしたくないと、生前二人の関係には憎悪を生み出す何かがあったのかもしれません。
ただ、いくら憎んでいたとしても、妻の遺骨を遺棄したら、それは犯罪となってしまいます。
例えお墓を作ってあげる気はなかったとしても、正しく処分する方法をしっていればこの男性は犯罪者になることはなかったことでしょう。
遺骨の処分に関する法律とは
遺骨を遺棄すると、刑法第190条・死体損壊等の罪に問われ、法律違反となります。
刑法第190条には「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。」と明記されています。
遺棄と遺骨を適切に処分するというのは全く異なります。
遺骨に敬意を払い適切に供養してあげていれば事件になることは決してありません。
遺骨を処分するにも確かにお金がかかりますが、出来るだけ安く抑えることもできます。
適切な遺骨の処分の仕方を学び、遺骨を遺棄することは絶対にやめましょう。