一部の地方自治体では、散骨に関する条例があります。おもには散骨事業者に対する規制等が目的ですが、個人の散骨に触れているところも有りますので該当する地域で散骨を検討されている方は注意が必要です。
散骨に関する条例やガイドラインのある市町村
散骨に関する条例を設けて規制がある主な都道府県は
北海道、長野県、神奈川県、埼玉県、静岡県
の5つです。
主に条例の規制対象となっているのは、散骨事業者ですが、
北海道長沼町、北海道石見沢市、埼玉県秩父市においては個人的な散骨も規制対象です。
それでは、各自治体の条例を詳しく見ていきましょう。
散骨に関する条例:北海道『長沼町さわやか環境づくり条例』
長沼町のさわやか環境づくり条例では、墓地以外での遺骨(顆粒状を含む)の散布を禁じています。つまり長沼町内における散骨はできません。また焼骨を散布する場所を提供することを業とした者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金となります。
【規制地域】 北海道長沼町
【規制の対象】 個人、散骨場事業者
【条例の主な規制内容】
・墓地以外の場所での散骨を禁止
・違反者への勧告
・散骨場を事業で行った場合の罰則
・勧告に従わない場合の罰則
散骨に関する条例:北海道『要綱第1号(七飯町の葬法に関する要綱)』
七飯町の葬法に関する要綱では、散骨事業者に対し、散骨場として事業を行う場合の申請や散骨してはいけない場所(公園や学校・病院・障がい者施設などから110m以上離れていること)などを定めています。
【要項の対象】 散骨場事業者
【要項の主な内容】
・散骨場設置に関する詳細な要件
・散骨場設置に対する町の許否裁量を強力に認める
散骨に関する条例:北海道『岩見沢市における散骨の適正化に関する条例施行規則』
岩見沢市における散骨の適正化に関する条例施行規則においても、事業者に対して散骨場を設ける際の規則を定めています。また、散骨場以外に散骨をしようとする場合は個人も市長に申請する必要があると定めています。
【規制の対象】個人、散骨場事業者
【条例の主な規制内容】
・散骨場設置に関する詳細な要件
(施設・隣接自治体との距離など厳格なもの)
・散骨場以外での散骨の禁止
・違反事業者への罰則
・報告・検査拒否者への罰則
散骨に関する条例:長野県『諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例』
長野県においては、南信に位置する諏訪市において、散骨事業者向けへの散骨許可の規制があります。散骨場として事業を行う場合には、市長への許可申請が必要になります。
【規制の対象】 散骨場事業者
【条例の主な規制内容】
・散骨場設置に関する詳細な要件
(設置場所から200メートル以内の自治会の同意書など)
散骨に関する条例:埼玉県『秩父市環境保全条例』
埼玉県秩父市では、環境保全の観点から、散骨場(墓地)以外での遺骨の散骨は許可していません。
市長が定める一部例外もあるようですが、基本的には散骨を許可はしていないようです。
【規制の対象】 個人、散骨場事業者
【条例の主な規制内容】
・墓地以外の場所での散骨を禁止
・例外的に散骨を市長が認める場合の要件を規定
(隣地所有者の同意または隣地境界から100メートル以上離れているなど)
散骨に関する条例:埼玉県『本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例』
埼玉県本庄市では、市民の宗教的観点に適合し、公衆衛生と公共の福祉の保全の為に、散骨事業者向けに散骨場の設置に関する規定を設けています。
【規制の対象】 散骨場事業者
【条例の主な規制内容】
・散骨場設置に関する詳細な要件
・市長による使用禁止命令など
散骨に関する条例:神奈川県『湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例』
神奈川県内の有名な温泉地である湯河原町では、公衆衛生の向上及び自然との調和がとれた快適な生活環境の確保を図ることを目的とし、散骨事業者に対して散骨場設置の際の細かな条例を設けています。近隣の土地所有者からの承諾を得る必要性もあるようです。
【規制の対象】 散骨場事業者
【条例の主な規制内容】
・散骨場設置に関する詳細な要件
( 隣地所有者の同意、住居地域との距離制限など)
散骨に関する条例:静岡県『御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例』
静岡県の御殿場市では、散骨事業者に対し、周囲300m圏内の自治会等に対し、散骨事業を行う旨の説明や許可を求める必要があると定めています。市長への申請や協議も必要とされています。
【規制の対象】 散骨場事業者
【条例の主な規制内容】
・散骨場設置の詳細な許可基準
・無許可経営への罰則
散骨に関するガイドライン:静岡県『熱海市海洋散骨事業ガイドライン』
熱海市は、有名な観光地であるため、「無秩序な散骨が行われることによって、風評被害等による熱海市のブランドイメージを毀損するおそれがある」と懸念して、海洋散骨業者に対してH27年に熱海市海洋散骨事業ガイドラインを制定しました。
【ガイドラインの対象】 散骨場事業者
【ガイドラインの主な内容】
・熱海市内から10km離れた海域から行うこと
・「熱海沖」、「初島沖」など「熱海」の文言を散骨事業の宣伝で使用しないこと
・レジャー時期である夏季の散骨を控えること
散骨に関する指針:静岡県『伊東市における海洋散骨に係る指針』
静岡県の伊東温泉は有名な観光地であり、温泉を楽しんだり、魚介類、海水浴、スキューバダイビングなど海に関わる名産品やアクティビティなどを体験しに訪れる観光客が多くいるため、伊東市のイメージを損なわないための散骨に関する指針が示されています。
【指針の対象】散骨場事業者、海洋散骨事業者
【指針の主な内容】
・散骨場など墓地に類似する施設の設置手続
・伊東市内の陸地から6海里以内の海域で散骨しないこと
・ 環境保全のため自然に還らないもの(金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物)をまかないこと
・宣伝・広報に関し、「伊東沖」、「伊東市の地名」など、「伊東」を連想す
る文言を使用しないこと
散骨に関する条例:静岡県『三島市散骨場の経営等の許可等に関する条例』
静岡県三島市では、公衆衛生の向上及び市民の良好な生活環境の確保を図るため、散骨を行う事業者に対して市長への事業許可申請や協議の必要性を定めています。
散骨に関する条例ができた背景
散骨を禁止する法律はありませんが、地方自治体によっては散骨に関する規制を定め、条例を制定しているところがあります。その背景には「漁業・農業への風評被害」や「観光名所としてのイメージの維持」などの目的があるようです。
なぜ北海道と静岡県は散骨の条例が多いの?
上記の各市町村による散骨に関する条例を見てみると、北海道と静岡県に条例を制定している自治体が多いことが見受けられます。
北海道の場合には、広大な陸地を利用して、そこに散骨場を建設する事業者が増えることが考えられます。
北海道では多くの場所が農地として農作物が生産されている場所も多々あります。
野菜や果物などの名産地である地域で、「散骨」を大々的に謳われてしまったとしたら、農作物に対して散骨が連想されてブランドイメージを損なうことにもなり得ます。
また、有名な観光地においては、名所となるような景勝地がある場合や、海でのアクティビティ、観光船などのツアーがある場合、そこでの散骨は観光地のイメージへの影響が懸念されます。
特に静岡県の熱海周辺などでは、海を見ながらの海産物の食事や温泉を楽しむことを目的とした来訪が多いため、観光客へ散骨などの供養のイメージが付かないように規制を設けていると考えられます。
以上のように、観光業や名産品に力を入れている地域である北海道や静岡県では風評被害を事前に防止して、商業を保護するために条例作ったのだと考えられます。
また、個人的に行う散骨においては規制が無い場合も多いですが、散骨業者が観光地での散骨を大々的に謳うことへの規制や散骨できる場所を規制する条例は今後も自治体単位で増える可能性があると考えられます。
ちなみに、故人の遺骨を、散骨するにあたり、マナーとして遺骨を必ず細かい粉末状にする必要があります。
なぜ遺骨を撒くには必ず粉骨しなければいけないの? にて詳細をご覧ください。