粉骨って違法だからやってはいけないんじゃない?
そう思っている方もいらっしゃるようです。
本記事では粉骨が違法とならない根拠や適法性について解説しています。
粉骨って違法じゃないの?
まず最初に結論から、
適正に実施される粉骨は違法ではないと言えるでしょう。
もし、粉骨をすることが違法であれば、全国に数百社以上もある散骨や粉骨の業者は全て違法に営業していることになってしまいます。
けれど、実際には普通に企業として皆さん運営されていますよね。
さて、実態はそうだったとしても、粉骨は本当に違法ではないのでしょうか。
粉骨に関する法律について考えてみましょう。
粉骨したら死体損壊罪に問われないの?
粉骨に関しては刑法190条の死体損壊等という法律があります。
通称、死体損壊罪や、遺骨遺棄罪と呼ばれたりもします。
第190条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。
条文を読んでみると、死体だけではなく、遺骨や遺髪、棺に納めてある物も対象となっています。
遺骨を損壊し、遺棄したら三年以下の懲役とあります。
損壊とは破壊すること、遺棄とは放置して置き去りにすることです。
これをそのまま解釈すると
遺骨を破壊したり置き去りするとこの法の対象となってしまいそうですね。
でも実際には散骨や粉骨が違法行為として摘発されないはなぜでしょうか。
それは散骨や粉骨の行為が
刑法第35条には、『正当業務行為』にあたると考えられるからです。
以下はその規定の内容です。
「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」
簡単に説明するなら、
行なっている業務に正当性があれば、罰せられることはないという内容です。
社会観念上、正当な業務に基づくものと認められてる行為は、その違法性が阻却されるのが一般的です。
例えば、ボクサーがリング上で戦っても暴行罪や傷害罪にならないのは正当業務行為だからです。
散骨や粉骨の業務が違法でないのはこれと同様の理由にあたると考えらます。
他にも死体損壊罪の対象となるけれど、正当業務行為として違法性がないされる例としては、
医師の司法解剖や火葬場での遺体の火葬業務なども挙げられるでしょう。
粉骨や散骨は正当な業務行為か
正当業務行為の正当性の判断基準は
社会通念上、客観的にみて、その行為に正当性があるかどうかで判断されます。
では、散骨や粉骨は社会通念上、正当な業務と言えるのでしょうか。
社会的にみた散骨や粉骨について考えてみます。
現代において、散骨はメディアや書籍でも多数取り上げられ、自然葬の一つとして社会に認知されるようになっています。
また、墓を承継する後継ぎがいない家庭や終活ブームを背景とした「自分の最期をどう迎えるか」という選択においても散骨は選ばれるようになってきています。
加えて、疎遠な家族関係や孤独死が増える中で、無縁仏は自治体抱える問題の一つとなっています。お墓と比べて金銭的にも負担が掛からない散骨は単身者の方や無縁仏の問題の受け皿として必要とされています。
このような現代社会の流れやニーズからも
『散骨は正当な業務行為である』
と解されるのではないでしょうか。
そして散骨が行われるために必要な粉骨も当然、違法性がないと判断されるのが妥当でしょう。
また非公式ではあるものの、法務省も散骨は節度を持って行われる限りは違法ではないと見解を示しています。
粉骨や散骨は敬意と節度を持って行いましょう
もちろん、どこにでも散骨していいわけではありません。
ルールを守って散骨しなければ、トラブルや法律違反にもなり得ます。
散骨や粉骨を行う際には、常に故人の遺骨への敬意と他者への配慮を忘れないようにしましょう。
敬意を払って行われる粉骨に問題はありませんが、仮に公然に粉骨が行われたり、他人に迷惑がかかるようなことがあればその限りではありません。
散骨に関してはこちらの記事で詳しく書いています。
「散骨を自分でしようと思うのだけれど、本当に大丈夫かな?」 「散骨は法律的に問題ないのでしょうか。」 本記事を読めば、散…
粉骨に違法性がない理由のまとめ
少し難しくなりましましたが、本記事のまとめです。
粉骨は死体損壊罪の要件に形式上当てはまるが、正当業務行為として違法性はないと判断される可能性が高い。(医師の司法解剖や、火葬場の火葬と同様)
非公式ではあるが、法務省は散骨は節度を持って行われる限り違法ではないと見解を示している。